がらんどう文字講座<序章>
界最古の字引「説文解字」(1)

陰陽五行説

がらんどう文字講座を始めるにあたって、なぜか数学的な話をしなくちゃいけない。今ちまたでは陰陽師がはやっているが、これは中国からやってきた考え方を発展したもので、その考え方というのは、易(えき)に出ている。易というのは当たるも八卦当たらぬも八卦のあの易。


八卦図(大漢和所収)
世界がどうやってできたのか、はじめ世界は混沌という状態にあった。混沌とはどういうことかというと、定まってないというかようするにあやふやな状態で、現在の雲呑(ワンタン)の語源というから、そうやって想像してほしい。
やがてこのワンタン状態から明るく澄んだ部分が上方にできあがり、下方には暗くよどんだ部分が出来上がってきた。この状態を陰陽二気という。

これで始めて対称ということがおこり、高きを天といい、低きを地という。この対称の間に中庸があり、天地間には人がある。人の陽が男であり陰が女である。この陰陽二気により万物を形成したと考えた。

陰を坤の卦(--)といい陽を乾の卦(━)という。この二卦の組み合わせに(2×2=4)より東西南北四方が生まれ、さらに二卦をかけて八卦となった。八卦と八卦との組み合わせ(8×8)により六十四卦の状態を導いて、万事をあらわした。これが易占の基本の考え方である。

陰陽は風雨明暗を生じでつごう六気となり、二卦あわせて(6×2)十二支(子牛寅・・)を得た。十二支により十二刻・十二月を表した。後に十二支には動物があてられた(鼠牛虎・・)。十二は天の運行により導き出された数である。

東西南北に中央を加えた五つの事象を、色と季節でであらわしたのが下の表であるが、これより発展して、万物は五つの元素から形成されると考えるに至った。その五つがすなわち木火土金水である。この五元素は相関していて、木は火を起し、火は土となり、土より金が生じ、金は水に変わり、水は木を育てる(五行相生)。水は火に、火は金に、金は木に、木は土に、土は水にそれぞれ克つ(五行相克)。このそれぞれの関与を五行という。

土用
西
 五行にもまた二卦あわせて(5×2)十干(甲乙丙丁・・)を得た。五とは人体より導き出された数である。

十干十二支の最小公倍数で六十という数を得て、昔はこれを暦としていた。関東の大鳥祭りは旧暦の酉の月の酉の日に行うのを名残としている。本年平成13年を平成辛巳年というように年序にも使う。六十歳を還暦と言うのもこの数による。

中国はこのように数に関して敏感な国であった。

さて、この講座を開くにあたり、「説文解字(せつもんかいじ)」という世界最古の字書の事を少し・・・
というのも、遊びのハンコはともかく篆刻など篆書を扱う人は知ってた方がいいと思うから。この字書は後漢の時代(西暦100年頃)許慎という人が、当時廃れかかっていた篆書を基本にその次元を探りおよそ一万の文字を整理したもので、この二千年近くこの字書を越すものはないと考えられている。考古学の発達により文字資料は新しくなって、その解釈をあらたむべきものも有るが、篆書の基本はこの字書にある。

説文解字の部首立ては現在の辞書の部首立ての倍以上の五百四十ある。陰を代表する六と陽の大なる数九より導き、五十四を得てさらに十を乗して(6×9×10)得た、宇宙万物を示すための数であった。またその順序も太元一の部より始まり、十干十二支で終わる。非常に緻密な考えに基づいた字書である。

あともうすこし、六書八体について続きを読んで。

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